『屋根の用語ってなんか難しい…』
『屋根工事をお願いしたいけど、どう説明したらいいのか分からない…』
『そもそも“葺く”って漢字が読めない…』
お客様からそのようなお声をたびたび頂きます。
私自身も屋根業を始めたばかりの頃は、漢字で書かれていた言葉も読めず苦労していました。
ちなみに、“葺く”は“ふく”と読みます。
“葺く(ふく)”とは、屋根の材料を張りつけ仕上げることです。
馴染みのない言葉・聞きなれない言葉は難しい。
それは当たり前のことです。
その経験から私は、お客様とお話する時は聞きなれない専門用語は使わず、なるべく分かりやすい言葉を選んで使っています。
日常生活で屋根用語を使うことはなかなかありませんが、覚えておくといざという時に便利ではないでしょうか。
また、屋根の基本を理解していれば、突発的な悪徳業者に惑わされるとこも未然に防げるでしょう。
今回は屋根初心者の方でも分かりやすく、基本的な屋根のことを説明させて頂きます。
なにか一つでも参考にして頂けたら嬉しいです。
▽▲もくじ▲▽
- 1.屋根の構造と名称(9選)
- 2.屋根の工事方法(2選)
- 3.屋根の素材(6選)
- 4.まとめ
▽▲1.屋根の構造と名称(9選)▲▽
- 棟(むね)
棟とは、屋根の面と面が山型に交差している頂上部分のことです。特に屋根の最上部にある水平な部分を大棟(おおむね)と呼びます。
この部分は屋根のてっぺんにあることから、強風・大雨・台風など自然災害や地震の影響も受けやすく、不具合が生じやすい場所でもあります。
棟のメンテナンスを怠っていると、風に飛ばされてしまったり、亀裂が入ったりしてしまうケースもあるので注意が必要です。
一般的に新築後7~10年程度でメンテナンスが必要なのか、一度屋根点検をすると良いとされています。
- 野地板(のじいた)
野地板とは、屋根材をしっかり固定するための土台となる下地材のことです。
昔の屋根(およそ40年)特に瓦屋根の野地板は、バラ板と呼ばれる幅20㎝ほどの杉材が使用されていました。バラ板は耐震性が弱く、構造用合板と比べて設置に手間もかかるため、最近はあまり見かけなくなりました。
現在の野地板は、12㎜構造用合板を使用している業者がほとんどです。
中には、安価な普通合板やコンパネを野地板としてしようしている業者も残念ながらみかけたことがあります。
これは代表的な手抜き工事の1つです。
野地板は一見、見えにくい部分ではありますが、だからこそ職人のこだわりを感じる部分でもあります。
あなた自身で、信頼できる屋根業者を見極めましょう。
〇構造用合板は針葉樹林(スギ・マツ・ヒノキなど)で、比較的軽いのに、しっかりとした木材です。別名“針葉樹合板”とも言います。屋根や床など構造耐力上とても重要な場所に使用されます。野地板はホームセンターでも購入することが出来ます。構造用合板であるか確認するには、構造用合板やJASの認定スタンプが押されているかどうかでチェックできます。最も野地板として適しています。
×普通合板は広葉樹林(ラワン・シナなど)を用い、厚さも様々で、加工しやすい木材です。別名“ラワン合板”“シナ合板”とも言います。内装や一般的にも広くDIYとしても使用されています。構造用合板よりも耐圧が弱く、安価です。野地板としては適さないです。
×コンパネはコンクリートを固める時に使用する板のことです。“型枠合板”とも呼ばれています。安価で耐水性には優れています。しかし、基本的には表面は粗く反りも大きいため、合板としての質は悪く、野地板としても適さないです。
- 下葺き材(したふきざい)/ルーフィング
下葺き材は“屋根用の防水シート”のことです。
下葺き材の劣化や破損が雨漏りの原因になることも多いです。
なぜなら一般的な貼り方は、大きなホチキスの芯のようなタッカーを使用します。結果として屋根に無数の穴を開けてしまうことになるからです。
田島ルーフィング/ニューライナールーフィング
新品の下葺き材はしなやかな弾力性があります。経年とともに、ゴム製品と同じようにシートが硬くなってしまいます。
下葺き材の性能は、耐久性はもちろん、遮熱性、透湿性など様々です。耐用性が10年程度の破れやすい紙質製品のものから、耐用性が30年の不織布製品のもの。
屋根は長い期間住宅を支える大切な役割を担っているので、当社では費用対効果を考慮しつつ、出来るだけ耐用性の長い製品をオススメしています。
- 垂木(たるき)
垂木とは、屋根のてっぺんにある棟から軒先の桁(けた)の間に取り付けられる長い木材のことです。
屋根材(瓦、アスファルトシングルなど)や野地板、下葺き材を支えており、非常に重要な屋根内部の骨組み部分です。
この3つの重い資材を支えているのが垂木です。
- 谷(たに)
谷とは、屋根の面と面が接合する場所のことです。
棟とは異なり、二方面からの雨水を集中して受ける重要な役割をしています。雨どいと同じような役割をしているので、別名“谷どい”とも言われています。
- 下屋根(げやね)
下屋根とは、2つ以上屋根がある場合の下側の屋根のことです。
2階建ての住宅の場合、1階の屋根を下屋根、2階の屋根を大屋根(おおやね)と言います。
- 雨押え板金(あまおさえばんきん)
雨押え板金とは、雨水の侵入を防ぐために屋根と外壁の継ぎ目部分に取り付けるものです。
2階建ての住宅では、1階の屋根と外壁の接合する部分に雨押え板金を取り付けます。
- 鼻隠し(はなかくし)
鼻隠しとは、軒先側の側面に取り付ける板材のことです。
雨樋を取り付けるための下地材として、また垂木などの木材を隠す役割をしています。
築年数20年以上の住宅は鼻隠しが木材で出来ているものが多いです。最近は、耐久性が高く、不燃材であるガルバリウム製品のものが主流です。
- 雨樋(あまどい)
雨樋とは、雨水を集めて排水させる筒状のものです。
雨樋は梅雨など雨が多い地域には欠かせないもので、存在感はあまりありませんが、立派な仕事をしてくれます。
もしも雨樋がなければ、屋根に落ちた雨水が色んな方向から地面に落ち、水たまりや溝を作ってしまいます。
また、雨音がうるさく騒音問題にもなりかねません。
最も普及している雨樋の素材は軽量で施工がしやすく、安価なプラスチックです。しかし、プラスチック製品は雨風に弱く、日光による紫外線に対する耐性も低いため、経年とともに歪みなどの不具合が生じやすいです。
▽▲2.屋根の工事方法(2選)▲▽
- カバー工法
カバー工法(重ね葺き)とは、今ある屋根材の上に新しい屋根材を被せることです。
そのため、古い屋根材の撤去・処分費用がかからず、葺き替えよりも短期間で安く行う事が出来ます。
- 葺き替え(ふきかえ)
葺き替え(ふきかえ)とは、今ある屋根材を全て撤去・処分して、新しい屋根材に張り替えることです。
同時に屋根材の内側にある下葺き材(ルーフィング)も交換することが多いです。
さらに、野地板(のじいた)と呼ばれる下地材が傷んでいる場合はこちらも張り替えます。
▽▲3.屋根の素材(6選)▲▽
- 日本瓦
従来の日本家屋で古くから使用されていました。
日本瓦の主原料は粘土です。
“日本瓦”という名前の通り、日本の気候や風土に適した瓦です。耐久性と強度に優れています。
特に耐久性はどの屋根材よりも優れています。
- セメント瓦
セメント瓦の主原料は文字通り、セメントです。セメントに砂などを混ぜて成形し、表面に塗装した瓦です。
日本瓦よりもデザイン性に富んでいますが、粘土成分よりもセメント成分の方が耐久性と防水性に乏しいというデメリットもあります。
1970~1980年代の高度成長期に広く普及していました。その当時は急成長に追いつかず、日本瓦が不足していたので、代わりにセメント瓦が多く使用されていました。
経年とともに、表面にこけや汚れが目立ってきます。
メンテナンスは部分修理・屋根塗装・葺き替え工事が考えられます。
長年メンテナンスされていない方は、雨漏りや破損する前に、ここで一度点検をオススメします。
- トタン
トタンとは、薄い合板に亜鉛でメッキした金属製の屋根材のことです。
住宅の他に、倉庫や工場など古くから広く使用されています。
トタンは軽量で建物への負担が少なく、費用が安いメリットがあります。一方、サビやすかったり、断熱性や遮音性が低いなどのデメリットもあります。
トタンの耐用年数の目安は20~30年程度ですが、サビが発生すると一気に浸食されてしまうので、5~10年に一度の塗り替え工事が必要となります。
経年とともに塗装がはがれ、トタンが錆び、ひどくなると穴があいてしまいます。そうなってしまうと、屋根全体の葺き替え工事が必要になるケースがほとんどです。
- ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板とは、アルミニウム・亜鉛・シリコンからなるメッキで加工された鋼板のことです。トタンと同様の金属屋根です。
近年の屋根リフォームでとても人気の素材です。
当社でも、瓦屋根の葺き替え工事やストレート屋根のカバー工法など広く使用されることが多く、街を歩いていてもガルバリウム鋼板の屋根を見かけることが増えてきました。
従来のトタン(亜鉛メッキ)にアルミニウムを混合させることで、耐久性を大幅に向上させ、錆びにくい屋根材になりました。
- メリット
-
-
耐久性に優れている。耐用年数40~50年。
-
軽くて、丈夫。日本瓦の1/10ほどの軽さ。
-
厚さ1~3mmと非常に薄く、加工がしやすい。
-
防水性が高く、雨漏りに強い。
-
- デメリット
-
-
金属板なので、耐熱性&防音性が低い
-
ガルバリウム鋼板にもデメリットはありますが、その点を考慮し、屋根裏に断熱材を考慮したり、ニチハの横暖ルーフなど断熱材一体型の屋根材を選ぶことも提案しています。
ガルバリウム鋼板は費用対効果もよく、これから更に普及していくと考えられています。
しかし、新築物件ではあまり普及していません。
新築住宅でスタンダードな化粧ストレートよりもガルバリウム鋼板を施工できる業者が少ないからです。
みどり屋根ではニチハの横暖ルーフをはじめ、様々なガルバリウム鋼板を取り扱っています。
屋根リフォームをお考えの方は一度、ガルバリウム鋼板をご検討してみてください。
- 化粧ストレート
化粧ストレートとは、セメントや繊維材を混ぜて固めたものです。日本の戸建て住宅の70%以上でしようされているスタンダードな屋根材です。
同じストレートでも“天然ストレート”と言われる粘板岩を使用して作られる屋根材もあります。
ヨーロッパのお城で使われているなど、高価なことから一般の住宅ではほとんど使用されていません。
現在は一般的に“ストレート”と言えば“化粧ストレート”のことを言います。
- アスファルトシングル
アスファルトシングルとは、アスファルト製シートの上に石粒を付着させた屋根材です。
アメリカの戸建住宅の80%以上はこのアスファルトシングルを使用した住宅です。他の屋根材よりも低価格なので、日本でもアスファルトシングルを使用した住宅が徐々に増えています。
低価格の反面、耐久性やメンテナンスに不安な声もあります。
アスファルトシングルの寿命は15~30年です。
20年以上前の素材と現在の素材とでは耐久性に違いがあります。また、日本製と海外製でも特性や保証内容に違いがあります。気になる方は今一度、保証内容をご確認下さい。
▽▲4.まとめ▲▽
最後までご拝読いただきまして、誠にありがとうございます。
屋根とは、雨風や日差し、寒暖などを防ぐために設けられた建物を覆うものです。
住宅においても屋根はとても重要な役割を占めています。
一般的に新築後7~10年程度でメンテナンスが必要言われています。
今回を機に大切な屋根を確認してみてはいかがでしょうか?
ご自宅の屋根、近所の屋根、屋根を見るきっかけになれば嬉しいです。